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「あの、今回のことって要するに、『私に告白したいけど、直接言うのは恥ずかしいから、わざわざ暗号を使った』って、そういうことなんですよね?」
私が一応『ペンタブ』さんの真意を確認すると、『ペンタブ』さんは言った。
「はい。そのままストレートにレビューに書き込むと、見ず知らずの人にまで、僕の気持ちがバレバレになってしまいますしね」
それはこっちまで恥ずかしくなるから、絶対にやめて欲しい。
『ペンタブ』さんが人並みに羞恥心のある人で良かったと思いながら、私はもう一つ確認してみた。
「この一週間、連絡が取れなかったのは、やっぱり私に暗号を解かせたかったからですか?」
「そうです。僕と連絡が取れなければ、真面目な『肉球ぷにぷに』さんならきっと自分で暗号を解こうとすると思ったので」
実際私は『ペンタブ』さんが予測した通りの行動を取った訳だけど、無駄に心配させられたし、どうにも癪だった。
私は甦ってきた怒りを持て余し気味にしながら、『ペンタブ』さんに言う。
「過ぎたことはもういいですけど、次からは私が合図を送ったら、ちゃんと申し込みして下さいね。私だって鬼じゃないんですから、いきなり連絡が取れなくなったら、心配くらいしますよ」
「すみません。まさか心配されているとは思わなかったので……でも、ちょっと嬉しいです」
電話越しでも『ペンタブ』さんが照れているのが伝わってきて、何だか私まで恥ずかしくなってしまった。
私はこの気持ちを『ペンタブ』さんに悟られまいと、わざと少し怒った声を出す。
「ここ、喜ぶところじゃなくて、反省するところですからね。ちゃんと反省して、二度とやらないで下さい。またいきなり音信不通になったりしたら、もう二度と協力しませんからね」
「わかりました。肝に銘じておきます」
『ペンタブ』さんは殊勝な声でそう言った。
とりあえず反省してくれたみたいだし、これ以上怒りを引き摺ることもないだろう。
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