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エピローグ
「わたしたちのデータはすでに入ってるから、起動したらすぐに認識してくれると思う」
俺の自慢の奥さんは、AIロボットの研究開発の第一人者だ。
精巧なヒト型のAIロボット開発計画に断固反対し続けて、研究所を辞めた。
「どうなっても知りませんからねって言って、辞表を叩きつけてやったの!」
さすがは俺の奥さんだ。よくやったと笑いながら抱きしめた。
俺だって仕事をしているし、優秀な彼女はきっとすぐに再就職先を見つけられるだろうから、なにも心配いらない。
そんな失業中の奥さんが、犬型のAIロボットを作りたいと言い出した。
「覚えてる? あのかわいい黒柴のロボット」
「ああ、よく覚えてるよ」
忘れるはずがない。
また会えるだなんて、まるで奇跡のようだ。
それはいいんだが……。
「スリープモードの顔、どうしてこんなにブサイクなんだ?」
「うふふっ、リアリティを追求したらこうなっちゃった」
茶目っ気たっぷりに笑う奥さんが、いくつになってもかわいすぎる。
ここで黒い毛並みの体がピクッと動き始め、ゆっくりと起き上がった。
白目が黒いつぶらな目に変わり、俺と奥さんを交互に眺める。
「こんにちは! カズキ! スミレ!」
「こんにちは」
笑って頭を撫でる俺の横で、すみれが目を潤ませている。
「あたしに名前をつけて!」
懐かしい明るい声が響く。
「おまえの名前は――――」
END
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