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「とにかく、いまからすみれちゃんに会ってもらうから」
「うん!」
張り切っている様子のフランケンを抱えて部屋を出る。
「俺の明るい未来のために協力してくれるんだろ? 頑張れ」
すみれは玄関の上がり框にちょこんと座って待っていた。
「やだぁ、かわいいっ!」
満面の笑みで両手を広げる。こっちにおいでポーズだ。
俺がその胸に飛び込みたいぐらいだ……その邪な妄想を振り払いながらフランケンを差し出した。
「すごいね。重さも手触りもハアハア息してる感じも、本物のワンちゃんそっくりだね!」
すみれがクスクス笑いながらフランケンの額をなでる。
「でも体の中から機械の音がするから、耳当ててみ」
俺に促され、すみれはフランケンの両脇を持つと、白い毛の生えたお腹に耳を当てた。
しばらくじっと聞いていたすみれが、フランケンを膝に下ろす。
「たしかにいろいろ聞こえるけど、なにかの装置を埋め込まれた本物の犬っていう可能性は?」
なるほど、そういう考え方もあるかもしれない。ただしそれは、しゃべらなければの話だ。
「しゃべっていいぞ」
「すみれちゃん、こんにちは!」
すみれが目を丸くする。
「すごい! フランちゃん、こんにちは。あなたはAIロボットなの?」
「そうだよ。だから、あたし死なないんだよ。なんなら……」
どうしてすぐ死んでみせようとするんだよっ!
「やめろ」
思わず低い声が出た。
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