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第4章 清水康太
登校してからずっと、同じクラスの清水康太のことを観察し続けている。
すみれと恋人同士になるはずだった男だ。
中肉中背。前髪を切り揃えた坊ちゃんカットに黒縁メガネ。
地味でおとなしく、馬鹿騒ぎしない性格。勉強はすごくできるわけではないが、かと言ってできないわけでもない。
クラスでも目立たない存在で、新年度が始まって2カ月経ったいまでも「清水って誰だっけ?」と言われたりしている。
ノーマークだった。
すみれのことを密かに狙っている男は多い。その中には、こいつだったら俺よりカッコいいし仕方ないよなってヤツもいる。
それなのに、なんで清水? すみれちゃん、そりゃないぜ。
「よう清水! 昼メシ一緒に食おうぜ!」
すみれちゃんの彼氏としてふさわしい男なのか確認せずにはいられず、4時限目が終わったと同時に清水の机に弁当を乗せ前の席に座る。
「…………?」
清水はメガネのレンズ越しに胡散臭そうな目をこちらに向ける。
「いつも誰と昼メシ食ってんの?」
清水と仲のいいヤツ誰だっけと思いながらキョロキョロ見回すが、誰もやって来そうにない。
するとボソっと清水が呟いた。
「いや、いつもひとりだから……」
なんだと!? さびしいヤツだな。いままで気づかずにごめんな。
「朝比奈君はいつも誰と?」
清水が弁当箱のフタを開ける。
一緒に食べることを容認してくれたようだ。
「俺? 気分によっていろいろ。ひとりで食べることもあるし」
さりげなく陽キャアピールでマウントをとる。ニッと笑うと、清水は無言のままチラッとこちらを見て弁当を食べ始めた。
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