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「待て、清水。おまえの弁当、豪華じゃね?」
自分の茶色一色の弁当と見比べて驚愕する。
色とりどりの野菜と果物、冷凍食品など一切使っていなさそうなおかずが何種類もぎっしり詰められていて、おにぎりも3つとも味付けが違う。
白いごはんを敷き詰めて、焼き肉のたれで味付けした肉をどーんと乗せただけの俺の弁当とは大違いだ。いや、母さんが作ってくれるこの焼肉弁当も好きなんだけれども。
「実は料理が趣味で……」
また小声で清水が呟く。
「おまえが作ったの!?」
思わず身を乗り出して聞くと、少し頬を赤らめながら清水が頷いた。
なんてことだ。まさかの料理男子!
もしかするとすみれちゃんは、こいつに胃袋を掴まれたのか!?
おのれ清水め。
すみれちゃんと「はい、あーんして♡」とかやるつもりだったんだな!? 許せんっ!
卵焼きを奪って食べた。
やべえ、うめぇじゃねーか!
「朝比奈君、なにやってるの?」
悶える俺を見て、クラスの女子が声をかけてきた。
「見ろよ、これ! 清水の手作り弁当だぜ? すげーうめえの!」
「えー! 清水君お料理できるの!?」
「なに、なに?」
女子たちが集まってくる。幸いなことに、その輪の中にすみれはいない。
あっという間に俺と清水の周りに黄色い声の人だかりができた。
陰キャだって恋ぐらいはする。それは認めるし俺だってよく知ってる。
だから清水よ、すみれちゃんは諦めて他の女子にしておけ。
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