第5章 すみれとのデート

4/6
前へ
/37ページ
次へ
「フランちゃんが販売されたら、わたしも買いたいな」 「あたしは一点物の特別製で、非売品なの!」 「へえ、きっとフランちゃんを作った人は、犬が大好きなんだね」 「そうだよ!」  非売品か。  フランケンが嘘をつくとは思えないから、それが本当だとして、どうしてそんな特別製のAIペットをヒキニートの俺が持っていたのか疑問だ。  モニター懸賞にでも当たったのか? 「これだけ精巧な黒柴が作れるなら、人間そっくりのAIも作れそうだよね」  すみれがなにげなくそう言って笑う。 「そうだなー。でもなんかそれ、やっちゃいけない気がするけどな」 「え?」  フランケンに感じる違和感は、人間だけの都合でプログラムされているAIロボットだからだ。 「カズキ、よくわかったね!」  フランケンの明るい声が響く。 「ヒト型のAIロボットが出来るとね、人間同士で恋愛したり結婚したりしなくなるんだよ」  フランケンのその言葉に、俺もすみれも衝撃を受けた。  しかし、ボーカロイドとの疑似恋愛をしていた俺にはよくわかる。    好みの容姿のAIロボットがいつも笑って甲斐甲斐しくお世話をしてくれる。年を取ることも病気になることもなく実に献身的に。  負の感情を持ち合わせないから、どんな理不尽なことをさせても泣いたり怒ったりすることもないし、見返りなど求めてこない。仕事や趣味にもとことん付き合ってくれるだろう。裏切られる心配もない。  フランケンの言う通り、生身の人間のパートナーなど不要なぐらいに魅力的だ。  きっと、すみれも似たようなことを考えているに違いない。唇をきゅっと引き結んで黙っている。  明るい声とは裏腹に、フランケンの言葉はまるで人類の滅亡を予言しているようで、ビミョーな空気になってしまった。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

63人が本棚に入れています
本棚に追加