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情けない顔を見られたくなくて、踵を返して駆け出した。
フランケンも俺の横にぴったりついて走っている。
角を曲がってさらに走り続けて、足がもつれて転んだ。アスファルトの道路に両手をついて体を起こしながら涙を流す。
「終わった……もう死にたい」
「大丈夫! あたしがカズキの身代わりになってあげる! だってあたし、死なないもん!」
あ、しまった。と気付いた時にはもう遅かった。
フランケンは見事な跳躍で走ってきた車に突っ込んでいく。
頼むからもうちょっと空気読めよ!
跳ね飛ばされるフランケンの姿に大きなため息が出る。
しかしこれが救いにもなった。
車の運転手に「うちの犬が突然飛び出してすみません」とひたすら謝り、そこからはフランケンを胸に抱えて帰った。
失恋したばかりなのになぜか笑えてきて、フランケンがそばにいてくれることがありがたい。
その夜、フランケンは明るく俺を励ましてくれた。
「世界の半分は女性だから大丈夫だよ!」
「手当たり次第にアタックしていけってことか?」
「そういう手もあるね!」
無責任なこと言うなよ。
でも、どっちみちすみれにはフラれる運命だったのだとしても、ちゃんと告白できたのだからよかったってことにしよう。
この程度で引きこもってたまるか。
むしろ、月曜日からすみれのほうが気まずい思いをするんじゃないかと、そっちのほうが心配だ。もういつもの電車には乗ってこないかもしれない。
「すみれちゃんに『大丈夫。すみれちゃんは気にしなくていいよ』って伝えたい」
フランケンが真っ黒な目でじーっと俺を見つめている。
「カズキは、やっぱりカズキだね。同じことを言うんだね」
「え? どういう意味だ?」
「あたしの飼い主だったカズキも、同じことを言ってたよ!」
フランケンのいる世界線で、清水を殴り、すみれに「サイテー」と言われて深く傷ついた俺のことを、彼女は心配してくれていたってことだろうか。
「フランケンは、元の世界ですみれちゃんに会ったことがあるのか?」
「うん! 『朝比奈君に謝りたい』って言ってたよ!」
すみれが未来で誰かと結婚して幸せに暮らす。
そんなことは聞きたくもないから、これまであえてフランケンに聞いてこなかった。
フランケンがすみれにも会ったことがあるとは、どういうことだろう。
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