第1章 黒柴フランケン

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 家が見えてくると、駐車場に車がなくてホッとした。  母さんがすでに出勤して家に居ない証拠だ。  よかった。もしも出勤前だったら説明を求められて、余計面倒なことになっていただろう。    玄関の鍵を開けて中に入ると、鞄とフランケンを下ろす。  そして真っ先に学校へ電話した。飼い犬が車に轢かれてけがをしたから遅刻すると伝えると、担任の先生はそれを信じて「大丈夫か?」と気遣ってくれた。    洗面所からタオルを持ってきて、雨に濡れたフランケンの体を拭いてやる。 「おまえ、フランケンって名前なのか?」 「うん! フランはカタカナで、ケンは犬っていう漢字なの」  つまり「フラン(ケン)」ってわけだな?  脳内で字面を思い浮かべる。 「なんだそのダセえネーミングは」 「カズキがつけてくれたのよ?」  フランケンが首を傾げる。    んなわけあるか! 知らねえし!! 「だから、人違いだっつの。俺、ほんとにおまえのこと知らないから」  AIって、こんなにもスムーズに会話できるところまで進化していたんだなと、少し感心してしまう。 「うん。だってあたし、未来から来たんだもん!」  待て、これはドッキリか?  思わずキョロキョロ見回してカメラを探してしまう。 「朝比奈一樹。お誕生日は6月15日でもうすぐ17歳。血液型はA型。中学生までは陰キャだったけど、めでたく高校デビューに成功。いまはオタクであることを隠して陽キャでおちゃらけた高校生を装っているんだよね?」 「え……」  なんで知ってんだよ。
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