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「好きな子は同じクラスの広沢すみれちゃん!」
当たってる。すみれちゃんを好きなことまで!
くそう、さてはこいつスパイか?
猫が宇宙人のスパイだっていう説なら聞いたことがあるけど、犬もそうなのか?
いや、飛躍しすぎだ。
宇宙人がこんなごく普通の男子高校生に興味を持つはずがないだろ。キャラを装うぐらい誰だってあるはずだし。
「今日はね、カズキが交通事故に遭う日なの」
「は……?」
思わず言葉を失ってフランケンの真っ黒な瞳を見つめ返す。
「そこからカズキの運命がおかしなことになっていくの」
フランケンが明るい声で続ける。
「カズキの入院中にすみれちゃんは、ほかの男と付き合い始める。ショックで勉強が手につかなくなって期末テストは全教科赤点。球技大会では集中力を欠いて凡ミス連発。それをすみれちゃんの彼氏にからかわれて殴りかかって停学処分」
なんだそりゃ。
怖くなってきたぞ……。
「すみれちゃんに『サイテーね!』って言われてさらに落ち込んで、夏休みが明ける頃にはすっかり陰キャに逆戻り」
「待て! それ以上、聞きたくないっ」
思わず両手で耳を塞いだ。
俺の手の甲をフランケンがぺろりと舐める。
舌が温かい。
そんな機能まで備わっているのか?
「でも大丈夫! あたしが代わりに轢かれたから、もうカズキは交通事故に遭わないよ」
顔を上げてフランケンを見つめる。
「なあ、おまえホントに大丈夫だったのか?」
「うん! だってあたし、死なないもん!」
いや、だからあれ、いっぺん死んでただろうが!
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