第1章 黒柴フランケン

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 フランケンは、軽トラとぶつかってもなんともなかったと主張しつづけている。  もしかしてこいつ、自分が死んだことに気付いていないだけなんじゃねえか? 「ちなみにフランケンは、故障した時に自動修復ができるのか?」 「そうよ。あたしオート修復機能がついているから死なないの! 痛みも感じないからノープロブレム!」  なにがノープロブレムだ。こっちがどれだけ驚いたと思ってるんだ!    つまりその修復プログラムが作動しなくなってはじめて「死んだ」ことになると言いたいわけだな?  でもそれ、不死身とは言わないよなあ……。いや、死んでも生き返るなら不死身って言うのか?  わからなくなってくる。 「何度死んでも生き返るっていうのを、どう解釈してるんだ?」  フランケンが突然口をつぐむ。  さらに黒目が点滅してしばらく固まった後、機械音声のように抑揚のない声色でしゃべりはじめた。 「AIには霊的な概念がなく、輪廻転生といった科学的根拠のない事象に関しては理解しておりません」  急に融通の利かないAIっぽくなったな、オイ。 「いや、生まれ変わりの話をしているんじゃなくて……えーっと? その修復しろって命令を出す、一番大事な箇所が故障すれば死んだことになるんだな?」 「マザーボードとエネルギー発生装置はうんと丈夫な素材で守られているの。だから、深海に沈んでもマグマにはまってもゾウに踏まれても死なないんだよ」  フランケンが胸を張って得意げに言う。 「なんなら、いまから一緒にゾウのいる場所に行ってぺったんこに……」 「やめろ、見たくない」  フランケンの言葉を途中で遮る。  頼むからこれ以上騒ぎを起こさないでくれ。  聞きたいことは山ほどあるが、それを話していたら日が暮れる。  こうしている間にも、すみれちゃんが他の男に告白されているかもしれないじゃないかっ!  今朝だって電車に乗り遅れないように急いでいたのは、すみれと同じ電車に乗るためだ。  フランケンを2階の自室に連れていき、ここで待っておくよう言いつけた俺は、傘を持って急いで高校へ向かったのだった。
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