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「犬のAIロボット!?」
「たぶんね。俺もまだ理解が追いついてないんだけどさ」
傘を持ってこなかったというすみれと相合傘で歩くだけで、俺の心は幸福感でいっぱいだ。
制服のブレザーの袖がたまにこすれあうのが、なんだかくすぐったい。
雨は上がりかけているが、どうかこのまま降り続いてくれと心の中で祈る。
「すみれちゃん、そういうの興味あるって言ってただろ? だから見てもらおうと思って」
これは本当のことだ。
彼女はド理系のいわゆるリケジョで、将来はAIの研究者になる夢を持っている。それを知っているからこそ、正直に打ち明けたのだ。
うちの犬を見にこないかと誘っても警戒されそうだが、それが本物の犬そっくりでしかも高度な会話をスムーズにできるAIとなれば、見たくなるに違いないと。
「すごく頑丈みたいで、ゾウに踏まれても壊れないとか言ってんだよね、本人が」
「へえ、すごいね。いまから朝比奈君のおうちに行ってもいい? ぜひ会わせて!」
なんと、すみれのほうから言ってきて驚いた。
「ええっ!?」
家の近くの公園で待ってもらって、そこにフランケンを連れて行くと提案するつもりだったのだが。
よほど興味があるってことか?
それとも、あれこれ期待しちゃっていいのか!?
よからぬ妄想をしそうになって、待てよと気付く。
俺の部屋には大好きなボーカロイド・ゆららちゃんのポスターやフィギュアがたくさん飾ってある。
マズい、あれを見られたら非常にマズいぞ!
すると、すみれが慌てて両手をぶんぶん振った。
「ごめん、ずうずうしかったよね」
「ああ、そんなことないよ。ええっと……いま家に誰もいないんだけど、玄関でもいい?」
色白のすみれの頬がほんのりピンクに染まる。
いまの言い方は不自然じゃなかっただろうか……。
エセ陽キャの経験値の低さがうらめしい。実は後ろ向きな性格なもんだから、こんなハッピーでドキドキなシナリオなんて考えていなかった!
もちろん大歓迎だと咄嗟に言えたらよかったのに。
ゆららちゃんには申し訳ないが、今夜中にグッズをすべて片付けて封印しよう。
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