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「 あいみんーーー!!!!俺はもう会えないなんて、嫌だからなーーー!!!!! 」
他のファンも引いている中で、掻き分けて前に来ようとする清水さんは、警備員に連れて行かれてしまった。
私は、今までの感謝の気持ちを込めて、深くお辞儀をして、会場から出ていくのを見送る。
最後のライブが終わった後、別れを惜しむようにメンバーとスタッフの人たちとお別れ会をした。
「 清水さん、何か怖くなかった? 」
「 それ思った。あいみ、今後気を付けなよ?ストーカーとかになったら大変だよ 」
「 清水さんはそんな人じゃないよ。きっと、最初から私たちのことを応援してくれてたから、突然の解散に気持ちが追いついてないんだよ 」
「 本当にあいみ、良い子すぎる 」
話題は矢張り清水さんのことで、怖がるメンバーにスタッフ達が追い打ちをかける言葉を放つ。
「 でもさ、清水さん。今日荷物チェックの時引っかかってたよね 」
「 どうしてですか? 」
「 庭師してるって言ってたから、仕事用のカバンで来たのかもしれないんだけど、剪定バサミが入ってたんだよね 」
「 あ〜、それね。私も何回か注意したことがある 」
「 え、何それ。怖すぎない? 」
「 まあ、大丈夫だとは思うけど、今後は私達もそばにいることが出来ないから皆気をつけてね 」
ざわつく楽屋で、私は1人背筋を震わせる。
清水さんが、庭師だなんて話は聞いたことがない。私にはいつも一般企業の営業マンだと言っていたのに。
どちらの職業が正しいのかは分からないが、どうして剪定バサミを持っていたのかが気になって仕方がない。
でももうアイドルでは無くなるから、会うことは無いだろう。
有名なアイドルとは違い、幸いにも私は住所特定やパパラッチとは縁が無い。
そして最後の宴は終わった。
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