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3人で毒草の鉢を片付け、店の中央の机につく。
私と葵ちゃんの向かいに座った菊子さんは、肩を落とし、うつむいて、まるで罪を自白するかのように話し始めた。
「昔からぁ、野草が大好きでぇ……野草の素晴らしさを知ってもらおうとぉ、この店を始めたんでぇす。でもぉ、全然ダメでぇ…………親戚の反対を押し切ってまで始めたのにぃ、……け、結局ぅ、周りの人たちに言われたとおりにぃ……うぅ…… っ」
「菊子さん……」
私は菊子さんの悩みの大きさを感じ取って、かける言葉が見つからなかった。
とりあえず名前を呼んでみるけど、声が震えて、その後に言葉が続かない。
「それで、さっきのお客さんは何だったんですか」
葵ちゃんが、不自然なくらい冷たい声で菊子さんを促した。
菊子さんは葵ちゃんをおびえたような目で見て、下を向いてしまう。
「すみませぇん。話しているうちにぃ、自分が情けなくなってきてぇ……」
「続きをどうぞ」
葵ちゃんが再度浴びせた冷たい声に、菊子さんがビクッと体を震わせる。
それを見て、葵ちゃんはなにかをこらえるように顔をしかめた。
ダメだ。葵ちゃん、完全に平静さを失ってる。それでも平気を装うために、声が冷たくなっちゃうんだ。
よく見ると、膝の上で行儀良く重ねた両手が少し震えてる。葵ちゃんも私と同じように動揺してるんだ。
そうだよね。
いくら葵ちゃんが冷静でも、あんなところを見て、平気ではいられないよね。
そう思うと、私の体の震えが少しだけ収まった。
右手を伸ばし、葵ちゃんの手に重ねる。驚く葵ちゃんと丁寧に視線を合わせてゆったりとほほえんで見せると、彼女の表情が少しだけゆるんだ。
葵ちゃんは下を向いて息をつくと、菊子さんに向かってぎこちなく、でも優しく笑いかける。
「――すみません、菊子さん。怒ってるんじゃないんです」
菊子さんは何も言わない。
店の中がしんと静まる。
この空気をどうにかしたくて、私は口を開いた。
「菊子さん、お願いです。教えてください。さっき来た人は誰だったんですか。他にも何か、ひどい目にあってるんじゃないんですか」
「……」
結局、菊子さんはそれ以上何も教えてくれなかった。
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