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「とりあえず。菊子さん! 営業時間内に薬を作るのは、やめてください!」
「あ、葵ちゃん……」
開口一番がそれ!? クレーマー騒ぎのせいで落ち込んでた菊子さんにいきなり、そんなクレームじみた提案をするなんて!
私はあわてたけど、菊子さんは傷つく気配もなく、ふふっとほほえんだ。
「――それはぁ、ザンネンですねぇ」
「「「ザンネン、って……」」」
ななめ上の返答に、私、葵ちゃん、千茅さんの3人は困惑と呆れが混ざった声でツッコんでしまう。
「もちろん、お薬の販売と紹介はやめませんよぉ。それが、『weeds』のもとからのウリですからぁ」
「それでいいと思います」
私が賛成し、葵ちゃんと千茅さんもうなずいて同意を示す。
「しかし、薬の販売だけではいささか味気ないのでは……」
「そうなのよね」
「一般のお客さんには、とっつきにくいかも」
う〜ん。
4人で額を集めて頭をひねる。
「――そういえば、ワラビ採り、楽しかったね」
「あぁ、あれですかぁ」
「ワラビ採り、とは?」
「近所に、山菜のワラビが生える斜面があるんですよぉ。そこで、わたしと蓬ちゃんと葵ちゃんの3人でワラビを収穫したんでぇす」
「斜面、ですか。危なくなかったのですか? 葵さん、転げ落ちたりなどは」
「一回、落ちたわね。蓬と、2人まとめて」
「大丈夫だったのですか!?」
「大丈夫よ。ケガするほどの高さじゃなかったもの――というか、どうしたのよ、急に。ワラビ採りの時の話なんて」
「あの時に菊子さんがワラビで作ってくれた油炒め、おいしかったな〜って」
「確かに。菊子さん、料理上手よね」
私は葵ちゃんにうなずいてみせた。
「菊子さんは、『生活の中で野草を利用する』ための知識が豊富なんですよね」
出会ってすぐの頃に、自分からそう言っていた。
「 なら、その知識を薬以外のことに利用すればいいんじゃないですか?」
菊子さんが、ハッとする。
「タンポポコーヒーとかぁ、ドクダミ茶とかぁ――お客さんに出したらいいかもしれませぇん……!」
葵ちゃんがそれに対して
「いっそのこと、カフェみたいなことをすればいいんじゃないかしら」
と、さらなる提案をして、
「そうですね」
「うん!」
「いいかもしれませぇん」
各々が賛成する。
「では、『野草のみせweeds』カフェスペース開設に向けてぇ、準備を始めましょぉ!」
「「「はい!」」」
こうして、「weeds」の大改革が始まったんだ。
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