1話

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1話

「入学おめでとう。君たちの高校生活が素晴らしいものになるよう願っている。」 校長の長い祝辞がこの言葉で終止符を打った。 (はぁ) 周りに人がいるため、声には出せず心の中でこの春1年生となった山本 雅(やまもと みやび)思った。 容姿はブスとまではいかないと⋯思う、平凡で、身長も平凡、特技はなし、頭は悪くて性格は人見知りだけれど⋯、誰がなんと言おうがである。 雅はその性格から中学の頃から友達は少なく、そんな少ない友達は違う高校へと行ってしまった。 ・ 体育館での入学式が終わり、みんながそれぞれの教室に戻った。 (俺⋯、高校で友達なんかできるのか) 自分の席に戻り、教室を見渡す。 なにやら、みなSNSのダイレクトメッセージなるもので入学前から連絡を取り友達作りをしていたらしく1日目から既にグループが出来ていた。 雅もSNSはやっているのだが、趣味のオタクアカウントしかない。 リアルアカウントを持つものだけで友達を作ってるとは思わず雅は驚きと、「友達作れない」と思っていたことが「作れ」に変わり焦りを感じ、ひとりでいる自分になんだか息苦しくなった。 「みんな席につけ〜」 担任の男性教師が教室に入ってきた。 その男性教師がイケメンだからか、女子は色めき立った。 「はーい、静かに。じゃあまぁ、最初なんで自己紹介します。俺の名前は宮島 伊織(みやじま いおり)です。よろしく〜」 宮島は黒板に自分の名前を書き、ゆるく自己紹介をした。 そのゆるさからか、生徒には好印象だ。 「次は、みんなが自己紹介する番でーす」 「「え〜」」 「初日から息ぴったりだな。ま、拒否権はないので、じゃ1番からよろしく」 だんだんとみんなの自己紹介が進んでいく。 (名前と、出身中学と、よろしくお願いしますって言えばいいだけ。それだけ。) 雅は出番が近づいて来るにつれてドキドキする胸に、そう言い聞かせた。 そんなことをしていると、雅の列の1番前の人が立った。 するとみんなが注目して、その人の声をしっかり聞こうとシーンとなった。 「平目 陽(ひらめ はる)です!北中出身です。名字がひらめって言うのでよく魚のヒラメってあだ名で呼ばれてました。」 自己紹介したその人は、後ろから見ている雅には横顔しか見れなかったがとても綺麗な顔をしたイケメンだった。 染められていない天然の、光に透ける茶色い髪と鼻筋が通った高い鼻。 そんなイケメンのチャーミングな自己紹介にみんながくすくすと笑った。 「これからよろしくね」 イケメンの微笑みに女子たちはノックアウト状態である。 そしてついに⋯、雅の番になった。 「や、山本雅です⋯。出身は東中⋯です。よろしくお願いします」 雅の平凡な自己紹介は幕を閉じた。 (普通に終わって良かった。けど一生に1回でいいから平目くんみたいな自己紹介してみたいな) なんて絶対出来ない自己紹介をしてみたい雅の後ろの席、最後の人の自己紹介の番となった。 だが、その人は立つ様子がない。 (んんん?) と雅が思っていると、さっき鮮烈な自己紹介をした平目がその人を呼ぶ。 「おーい、千隼〜!起きろ〜」 「んんっ」 そんなふたりのやり取りにまた女子が色めき立つ。 「え?なにこれ」 千隼と呼ばれた男がちょうど前にいた雅に話しかける。 後ろを向くと、黒髪のまたもや綺麗な顔をしたイケメンで雅は眩しくなった。 「い、今みんなで自己紹介してて、それで⋯」 「ああ⋯、そういうことね」 (な、なんなんだこの列。イケメンパレードかよ) 自分の列が5人中2人イケメンで雅はツッコミを入れてしまった。 そしてそのイケメンは頭をかきながら、立ち上がった。 「え〜っと、和久井 千隼(わくい ちはや)です。北中でした、よろしく」 完結な自己紹介をしてすぐ座り、また机に突っ伏して寝た。 「はーい、自己紹介も終わったところで、提出物集めたいと思いまーす。後ろの人集めてきて」 (あ、提出物全部忘れた。初日から悪目立ちしたくないのに⋯っ。しかも後ろの人って⋯寝てるしっ!) 雅は変な汗が出てきた。
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