相手は狩りのつもりでしょうがこちらは釣りをしてるんです

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 まず先生が声をかけたのは商人風の小太りの髭をはやした男だった。少し目付きが悪い。  とにかく声をかけろとは言ったけど私だったらパスかなあ。でも確か先生って男性の見た目は一切こだわらないんだったっけ。 「やあ、そこの君。今何してるんだ? 暇ならボクと一般漫画のエロシーンの方がエロい症候群について語らないか?」 「お嬢ちゃん、一人かい? もしかして迷子なのかな?」 「これはこれは、見た目通りの低レベルな思考回路の持ち主のようだね。こう見えてもボクはすでに成人している」 「お父さんかお母さんは一緒じゃないのかい? おじさん憲兵さんのところまでついていってあげようか」 「いや、ついてきてくれるというのならぜひ我が家までお願いしたい」 「うーん、おじさんも用事があって忙しいからなあ……」 「そこをなんとかならないか? ボクの体を差し出すと言っているんだ。もちろん報酬も支払おう。いくら払えばいい?」 「ストップストップ!!」 「なんだリコくん、今いいところなんだから邪魔しないでくれ」 「一つもいいところはありませんでしたよ! すみません私この子の保護者なんです」 「そうかそうか。いや、保護者の方に会えてよかったね。では私はこれで」  そう言って商人風の男は何もなかったように歩き去っていった。 「どういうつもりなんだリコくん」先生は不服そうだ。 「それはこっちのセリフですよ。いったいどういうつもりであんなこと言ったんですか」 「君が餌を垂らせばいいって言ったんだろ。もう少しで家まで来てくれたかもしれないのに」 「こっちがお金払ってどうするんですか。お金を払って関係を求めるのはちゃんと許可を取っているお店じゃないと違法ですよ!」 「しかし……わざわざ家に来てもらって性交渉してもらうというのにタダというわけには……」 「タダでいいんですよ! どうしていつもは偉そうにふんぞり返ってるのにこういうときだけ卑屈なんですか。いいですか、先生はとてもかわいいんですからもっと自分に自信を持ってください。あといきなり体の関係を求めるのは禁止です。まずは清いお付き合いからです。わかりました?」 「わ、わかった。だが、本来、ナンパというものの目的とは性交渉じゃないのか?」 「そういう知識だけはいっちょまえですね……今日は彼氏を探しに来ているんですからこんな真っ昼間からいきなりそんな事は考えなくていいんです。まずはお昼を一緒に取るくらいを目標にしてみてください」 「わかった。やってみるよ」  先生はまたすぐに次の男を見つけてなんの躊躇もなく声をかけに言った。  あの度胸は見習いたいところだ。
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