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久しく会っていない級友と邂逅を果たした。
偶然か、運命か、其処は壮麗な冥界だった。
「──こんな所で、逢うとはなぁ」
溜息と霞んだ虚無な眼。
互いに微塵も興味が無い事だけが明白だった。
生涯に幕を閉じたと言う事実が、言葉をかける気力すらも削った。黒ずんだ空間内で形になった途端、抱いていた将来への淡い希望や渇望が、一気に崩れていく未来が見えたからだろう。
嘗て、僕達は、息をして濃密な過去を生きていた。
無価値な明日が頼んでいなくても襲ってきた。
今日死ぬかもしれないのに、明日の予定をたてた。
明日死ぬかもしれないのに、今日を孤独と過ごした。
「なあ」
俯いたまま、低い声を出す。嗚咽じみた声音を醸していたかもしれない。
「なんだ」
血液が沸く感覚。全身に滾る往昔の感触。
──追懐。
──望郷。
──懐郷。
級友と、眼が合う。
「もう一度、名前で、呼んでくれないか?」
閑寂な視線。求めていたもの、自身が求めていた事が分かった。
「もちろんだ。一日は長いんだ。だから、」
噛み締めて言った。離さないように、離せないように。
「また、笑いあおうぜ」
放課後の喧噪。
軽音楽部のコンサートが聴こえる。
英語の追試を受ける生徒の後ろ姿。
グラウンドで掛け声を発する野球部。
夕焼けに翳る自転車の数多。
「分かった」
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