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「ワンワンッ」
黒い柴犬が転がるように走ってくる。
「チロっ……うわっぷ」
両手を広げて屈むと、飛びかかってきたチロのマズルがわたしの口にぶち当たった。
「ここにいたの? 捜したよ~っ」
ジャンプしながら激しく尻尾を振る。
抱きしめたいのにチロの動きが激しくて抱きしめられない。
「おやまあ、カナメ」
「あ、おばあちゃん。チロ、おばあちゃんちに来てたの?」
まだ荒い息のチロの背を撫でながら、木の引き戸から出てきたおばあちゃんに尋ねる。
「散歩の途中でいなくなっちゃって。みんなで捜してたんだよー。犬って帰巣本能があるっていうけど、まさか一回しか来たことないここに来てたなんて」
にこにこ笑うおばあちゃん。
「ちょうどモロコシが茹だったとこだよ。上がって食べていきな」
「うんっ! チロ、おいで」
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