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広い和室のまん中にある円卓にすわって、アツアツのトウモロコシにかぶりつく。
あー、なんだかとってもおいしい。
台所からおばあちゃんが声をかけてくる。
「ユタカは元気にしてるかい?」
「うん、元気だよー。相変わらずだよー」
「そうかい。……まだ算数がわからないから学校行きたくないって言ってるのかい」
……え……?
食べかけのトウモロコシを皿に戻して、台所にいるおばあちゃんに駆け寄る。
「おばあちゃん?」
わたしの顔を見てきょとんとするおばあちゃん。
わたしは恐る恐る言ってみる。
「ユタカは……もう社会人だよ」
「ああ、ああ、そうだったねえ」
おばあちゃんは顔のシワを深くして、なんでもないように笑った。
……認知症!? 今までそんな予兆、全然なかったのに。
「おばあちゃん、こっち来てすわって」
心配になったわたしは、おばあちゃんに「住所は?」「息子たちの名前は?」などの質問をしてみた。
ちゃんと答えられた。
まだ初期ってことかもしれない。
とにかく家に帰ったらみんなと相談しよう。
すると庭先から「クーン、クーン」とチロの声がする。
「チロ、久しぶりにカナメと遊びたいんじゃないかい?
夕飯はカナメの好きなお稲荷さんにするから、それまで遊んでおいで」
「……うん」
おばあちゃんの症状は、すぐにどうこうなるってものではないだろう。
わたしは縁側から庭に下りると、チロを連れて裏山へ行った。
「チーロ」
数日家族と別れていて寂しかったのか、チロはいつものように遠くへ走っていかず、わたしの傍から離れない。
真っ黒い目でわたしを見上げ、うれしそうに笑っている。
さんざん遊んでおばあちゃんちに帰る。
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