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田んぼからゲロゲロとカエルの声が聞こえる。 空にはたくさんの星。  一歩一歩歩くたび、少しずつわたしの記憶がよみがえってきた。  チロが行方不明になったのは、わたしが小学生の頃。もう十五年以上も前のことだ。  その半月後、いなくなった直後に車にひかれて死んでしまっていたことがわかったのだった。  おばあちゃんが亡くなったのもわたしが小学生の頃だった。  小五の春のことで……その前年の夏休み、おばあちゃんちから帰るとき、「来年の夏もトウモロコシとお稲荷さん、食べさせてねー」と約束したのが、おばあちゃんとの最後の会話だった。  すべてを思い出し、きびすを返す。 「おばあちゃんっ! チロっ!」  わたしは戻ろうとしたが進めず、ものすごいいきおいで後ろに引っ張られた。
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