Day.21

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 硬い熱の塊が内臓を押し上げる。激しさを伴わない行為は、後ろに飲み込まされた感覚を如実に伝えてくる。 「だ、め……、奥、入っちゃ…ぅ」 「挿れて欲しいくせに、よく言う」  耳元に響く笑い声とともに、躰が小刻みに揺れる。そんなさざ波のような刺激さえも、大きな快感となってハーヴィーを襲った。 「あッ、……やっ、ぁ」  今にも最奥の襞を抉じ開けそうな先端は、だがゆっくりと後退した。 「ぁ……っ」 「物足りなそうな声を出すなよ。嫌なんだろ?」 「っ、ぅ……」  何もかもを見抜いているようなロイクの声に、羞恥と快感がない交ぜになって込み上げる。 「素直にねだれるまで、おあずけだ」  意地の悪い声がそう囁いて、ハーヴィーはぬるい刺激に苛まれ続けることとなった。  際どい所まで内臓を押し上げられては、ゆっくりと引いていく熱に焦らされる。達するには激しさの足りない抽送はじれったく、けれども張り出した先端が、抽送を繰り返すたびに敏感な部分を幾度もくじいていく。 「う……っ、やぁッ、も……出したぃ……っ」 「出したいのなら出せよ。誰も出すなとは言ってない」 「……足り、な…っ、気持ちぃ、のに……っ、出ない…っ」  まるで泣きじゃくってでもいるかのような声を漏らし、ハーヴィーは大きな躰の下で身じろいだ。敷布に擦れる屹立から僅かでも快楽を拾い上げようと、あさましく身を捩る。 「もっとぉ……、ロイ、動いて…っ、中、抉って…ッ」 「違うだろ?」  最奥の襞を押し上げては、ゆっくりと引かれる先端に媚肉が絡みつく。 「ぁっ、も、……奥、挿れて……っ、内臓……犯して欲し…っ」 「もう、焦らされるのは満足か?」 「出したぃ……」 「素直で良い子だ」  これまで以上に深く入り込んだ硬い熱の棒に最奥の襞を割り開かれて、ハーヴィーは全身を強張らせた。待ち望んでいた刺激は強烈で、大量の呼気が嬌声とともに零れ出る。 「あッ、は……ッ、良いッ」  硬い襞を張り出した先端が行き来するたび、ロイクの下で肢体が跳ねる。ぴたりと重なり合った躰は、どこもかしこも熱く、今にも溶け合ってしまいそうだった。 「と、まら、な……っ、ロイ……!」 「出したかったんだろ? いくらでも吐き出せ」  耳朶に掛かる吐息さえもが気持ち良くて、ハーヴィーは幾度も欲を吐き出した。    ◇   ◇   ◇  気だるいどころか気を抜けばそのまま倒れ込んでしまいそうなほどの疲労感に包まれながら、ハーヴィーはロイクに抱えられたままシャワーを浴びた。 「そんなに疲れた顔をして、本当に仕事に行くつもりかい?」 「……当たり前だ…」 「あんな事があった後なのに、君が無理をする必要はないだろう?」  アレハンドロが急逝した件はクルーに伏せられているが、さすがに同じホテル部門のスタッフたちは皆知っている。確かにロイクの言う通り、不幸な現場に居合わせてしまったハーヴィーを休ませようと、三人のマネージャーにも進言されてはいた。だがしかし。 「こんな理由で休めるか」  実際にアレハンドロの件ではショックを受けたハーヴィーではあるが、現状はといえばご覧のとおりである。 「君は、仕事に対してだけは真面目だからねぇ」 「仕事なんだから当たり前だろう」  幾分か声が低くめられたハーヴィーの声は、ドライヤーの音に掻き消された。適度な温風に煽られた前髪に、反射的に目蓋を閉じる。節の高いロイクの指先が、水気を孕んだ髪をさらさらと撫でていく。 「そのまま寝てしまえばいいのに」 「寝ないと言ってるだろう」  決着のつかない押し問答を続けていれば、不意にロイクがドライヤーを止めた。 「ロイ?」  完全には乾ききっていない髪に、ハーヴィーが怪訝な顔を向ける。 「気配がしたから」  そう、ロイクが言った瞬間、トントンとノックの音が部屋に響く。差し出されたドライヤーをハーヴィーは無言で受け取った。 「ガブリエルかな」  独り言のように呟きながら、ロイクがドアを開ける。果たしてドアの先に立っていたのは、予想通りガブリエルだった。が、その表情はどこか険しい。 「こんな時間にどうしたのかな?」 「どうしたのかな? じゃないだろ!」  どうにもお怒り気味のガブリエルを、ロイクは部屋へと招き入れた。廊下で騒がれるのは、さすがに耳目を集める。 「話は中で聞こうか」
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