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 薄闇の中、灰色のフードを被った影が女性に馬乗りになって、ひも状のようなもので首を絞めている。  まるで、殺人を愉しんでいるように見える。  女性は無抵抗だった。もしかすると、もう息絶えているのかもしれない。  フードの影は女性がぐったりしているにも関わらず、執拗に首を絞め続けていた。  女はすでに死んでいた。これ以上、首を締め上げることに何の意味があるんだ?  やめろよ。あんまり絞めたら、痛がるだろう。あ、そんなことないか。もう、女は死んでいるのだから。痛いも痒いもない。  どこかで、カラスがけたたましく鳴く声が聞こえた。 「先生、僕はこんな夢をもう、四年も見ています。夢で終ればいいのですが、その夢が現実になるんです」  壁一面、真っ白な部屋の中にいた。無駄な音はしない。時折、薔薇の香りがした。  白衣を着た先生は、カルテに何かを書き込んでいた。音もしない部屋に、ペンを走らせる音だけがする。 「本当に現実になるんですか?たまたま見た夢が現実になっているに過ぎないと思います」  にべもなく、精神科医は言った。 「そんなことありません。先生、僕は連続婦女絞殺事件の捜査に協力しているんです」  精神科医は眉をピクリと動かした。 「ご存知だとは思いますが、三年前から連続して起きている婦女絞殺事件の殺害現場を夢で見るんです。それで、僕が見た夢の場所で、実際に殺人が行われているんです」  僕はつい、口を滑らせてしまったが、もう、止めることはできなかった。 「先生、僕は前科者なんです。警察と司法取引をしました。罪状を軽くする代わりに、夢の情報を提供することになったんです」  懺悔でも告白するように、僕は吐露した。
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