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「殺虫剤あったっけ?」
「リビングにあったかな。持って来ようか?」
奈知はそう答えて襖を開けた。
「ダメ、逃げちゃうかもしれないから、そっと出て行って」
「分かった」
奈知はリビングで殺虫剤を見付けたが空だった。そっと和室に戻る。
「お姉ちゃん、中身がなかった。どうしよう」
「新聞紙で叩いてみせる」
美知はそう言って蠅を追いかけまわす。蠅はブンブンとすばしっこく逃げる。
「奈知、私の部屋から夏掛けを持って来て。あれを上から被せれば捕まるよ。きっと」
「そうか。お姉ちゃん、頭良い」
美知は蠅を睨みつけて奈知が夏掛けを持って来るのを待つ。本当は毛布とかのほうが捕まりそうだが今は8月なので薄い布団しか出していない。美知は奈知が二階から降りて来るのを待った。
ブーン、ブーン。
ブーン、ブーン。
蠅はあっちこっちにとまっては飛んでついには美知の肩にまでとまる。
バシッ
新聞紙で叩くが上手いこと逃げられてしまう。そこに奈知が夏掛けを持ってやって来た。
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