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オラオラ系とマットヘルスと私
つい先日のこと。
知り合いのbarに顔を出そうとビルのエレベーターに乗った。
俺以外にもう一人乗り込んで来た。
「おい、◯◯って店ってここであってんの?」
振り向いた先には絵に描いたようなオラオラ系の推定26歳ぐらいが立っていた。
おいおい、マジかよ。いきなりタメ口だなんて、この坊やは常識もくそもねーな。
間違いない。
デカ箱のイベントの最前列で上半身裸になってるタイプだ!と悟った。
いつもは仏の橋本と言われる私だが、勇気を振り絞って「しらねーよ」と返した。
返ってきたのは舌打ちだった。
ちなみに俺は本当にその店を知らないのだ。
俺は先に降り、知り合いのbarで軽く飲んだ後、日頃の疲れを癒すのと、お清めの儀式のために、マットヘ◯スに向かった。
受付でお金を払い、待合室へと案内される。
俺は時が止まった。
なんとさっきのオラオラ系が待合室で順番待ちしているではないか!!
これはマズイ!
いくら年下とは言え、クラブでしょっちゅう喧嘩してそうな奴に地下格闘技二戦二敗の俺が勝てる訳がない‥
ましてや俺は逆上がりができないのだ!
まわりの待合室の客が金をかけるなら
オラオラ系2.1倍
俺4.8倍
と言ったところだろう。
が、しかし‥
よく見るとオラオラ系君、少しタジタジしてやいないか?
はぁ〜ん?
さては初めてだな?
ふふん。
それを悟った俺はオラオラ系の隣に座り、友達に電話をかけた。
「おう、おつかれー。今?
マットマット!また来ちゃったよー」
電話で常連アピール。
もはや俺の小物っぷりなどどうでも良い、オラオラ系の心さえ折れればそれでいいのだ。
すると番号が呼ばれる。
オラオラ系が「はい!」と敬語で立ち上がった。
まあ精々頑張ってこいよ‥と、もはや親心に似たものが出てきた。
そして程なくして俺はプレイルームに呼ばれ、マットの上で骨抜きにされる訳だ。
うっかりテンション上がった俺は延長かまして90分コースになってしまった。
すっかりオラオラ系のことを忘れ、入り口で靴を履いていると、後ろから気配がする。
オラオラ系だ。
こ、こいつ初回から90分コースか!?
しかし、オラオラ系の顔には、さっきのエレベーターで感じた殺気はもうなかった。
彼の顔には爽やかささえ感じる。
目があうと、笑顔で軽く会釈をして来た。
俺は靴を履きながら、ニコっと笑顔を返した。
そして二人は入り口で別々の方向に別れて行った。
あいつ‥
元気してるかなぁ‥
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