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私の元まで走ってやって来た彼──ジャックくんは傘をさしてニコニコと笑っている。
「迎えに来たぜ、ヒメコさん」
現実は曇天だというのに、ジャックくんの笑顔はキラキラと太陽の様に眩しい。
「わ、わざわざ来てくれたの?」
「当然! てか、家帰ったら玄関にヒメコさんの傘がおいてあっからまじビビッたし!」
……そう言われてみれば手にした折りたたみ傘をバッグに入れた記憶はない。
「ヒメコさん、オレにはめちゃくちゃ傘のこと言ったのに自分が忘れるとかさ──」
“年上のくせに抜けてる”とか“バカじゃん”とか言われてしまうのだろうかとドキドキする。だけど。
「オレのことマジで好きすぎじゃん! でもちゃんと自分のことも大切にしてくれねーとオレ嫌だかんな!」
ジャックくんはあっけらかんとそう言った。
「ヒメコさんが自分のこと大切にしねーならオレがするしかねーじゃんってことでむかえに来たんだ!」
「……ジャックくん、ううっ、ありがとう、ありがとう」
かわいい上に優しいジャックくんに思わず泣き出しそうに……いや、泣いた。
「え? な、何で泣くんだ??」
「ジャックくんの優しさが身に染みて」
「あー、そうなん?」
絶対に分かってなさそうなジャックに、私は手を差し出す。
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