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夏休み前に
魔法学校でお馴染みの3年生のナールとカルロは夏休み前の進級試験の準備に余念がなかった。
3年生から4年生に上がる進級試験の課題が発表された。
1,箒は使い方の習熟。
先生が飛ばした魔法動物を学校の魔法の森を一周する前に捕まえること。
2,歴史は魔法界の暗黒時代であった魔女狩りの単元。
その他の魔法薬や呪文の試験は授業中に既に終わっていた。
本来は最終の進級試験は箒の使い方の習熟度のみのはずなのだ。
ところが、歴史の授業でカルロが自分が既に理解しているのを良いことに、いたずらをしていて先生に叱られ、そのために授業が大幅に遅れてしまったのだ。
カルロは魔女狩りだから、男子の自分には関係ないと勝手に勘違いしていた。そして、その単元は女子が重点的に習うと信じ込んでいた。
魔女狩りと言っても男性も魔法を使うと解かれば同じように処刑されていたと言うのに。
成績優秀なのに、頭が良いのか悪いのかわからないカルロだった。
そんな事情でカルロは進級試験の課題が発表されてからは、クラスのみんなから毎日チクチクと痛い視線ならぬ、魔法で作り出した小さな画びょうを、どの授業時間にも椅子に置かれる羽目になっていた。
この魔法で作り出した画びょうは相手に刺さって痛いと思った瞬間に消えてしまう。傷も残らないが針に刺される痛みだけは感じるのだった。
箒の使い方の習熟度は個人差が大きいため、先生方は生徒ごとにぎりぎり捕まえられる程度の魔法動物を飛ばし、生徒の一生懸命さを見て、成績を決める。
ナールはカルロに画びょうを仕掛けたりはしなかったが、カルロの授業中の悪ふざけには腹を立てていたので、いつもの試験の時のようにカルロと一緒に勉強したりはしなかった。
進級試験はまず、学科の歴史から始まった。
魔女狩りは魔法を使う物にとってはとても恐ろしい歴史であるし、現代でもまだ、マヌール(人間族)の中には魔法を使う物を排除しようと考える者もいる。
二度と悲劇を繰り返さないで、マヌールとも上手にお付き合いするためのマナーなども含まれた重要な試験なのだ。
カルロは授業中のチクチクにも負けず、自分が悪かったことを潔く認め、誰にも仕返しなどせずに試験勉強にいそしんだ。
ナールはそんなカルロを見ていて、少しは一緒に勉強してあげればよかったとちょっと心が痛んだ。
ただ、二人とも、元々成績は優秀なので、魔女狩りの歴史をしっかりと覚え、魔法族以外の者たちともうまくやっていくための答えをきちんと導き出した。
二人とも筆記の試験では問題なく合格点をとれた。
いよいよ、進級試験の一番難しい箒の使い方の習熟度だ。
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