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だが、そのようなことになれば政子の弟、北条義時が黙ってはいないだろう。彼は自分の地位を固めるためなら意見の対立した父時政を追放したように、はたまた幕府創設当時からいた有力武士たちを滅ぼしたように、容赦なく蹴散らしていく。
政子の息子で武に秀でていた頼家の暗殺にも彼は知らぬ顔をしているが関わっているに違いない。そして三代将軍となった実朝を裏で操りながら、頼家が遺した子どもたちを煩わしく思っているのだ。
「だから、寺に入れておいたというのに……」
頼家には四人の息子と一人の姫がいるが、長男の一幡は比企能員の変で謀殺されている。比企氏に政権を奪われまいと企てたその内容に一幡の殺害まで含まれていたことを政子は知らなかった。けれどその時はまだ鎌倉で全権を振るっていた父に反抗するちからもなく、御家人を無視して強引な政を行う息子の頼家を修禅寺に封じ込めることしかできなかった。
頼家もその幽閉先で殺され、すべては北条氏の思惑通りに動いているかに見える。現に三代将軍実朝は武よりも文に優れ、和歌を愛する優男だ。自分の息子でありながらひ弱な実朝を政子は情けないと感じるときもある。
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