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「というかお前!!」
「はい!!」
風呂へ入るや否や、シアの大声が理央に突き刺さる。
風呂場の椅子に腰かけたままシアは理央を真っ直ぐに睨みつけ、そのままゆっくりと指差す。
「シエのこと好きだろ」
理央の口がゆっくりと開いていく。
なぜバレたと言わんばかりに驚く理央に、「そりゃバレるだろ」と全員心の中でツッコミを入れた。
しかし、あれほど大事に思っている妹を好いている男がいるなんて、シアにとっては地雷でしか無いだろう。
そしてそれを誰より心配していたのはやはり理央だった。
「い……」
「嘘ついたら殺すぞ」
「殺!?」
「おらどっちだ」
「それは……」
理央は姿勢を正して咳払いを一つ。
そして真っ直ぐにシアを見つめた。
「はい、その通り、俺は会長……シエさんのことが好きです」
「ハッキリ言えたのはいい事だし褒めてあげたいんだけど、なんせ……」
珠喇が苦笑いをこぼす。
ここは風呂場な上に腰にタオル一枚で何をやってるのかこのふたりは。という気持ちの方が、どうしても大きいのだ。
だがあくまで二人は真剣らしく、相変わらずシアは椅子に座り、そして理央はそこから少し離れたところで立っていた。
睨んでいたシアが口を開く。
「いいか?まず言っとくさ」
「は、はい」
「お前みたいなヘタレに俺の妹はやらんさ!!!」
「えー!!?」
ガーン、と理央はその場に崩れ落ちた。
そりゃ許されないだろうとは思っていたが、まさかヘタレだからとしっかりした理由があるとは思っていなかったのだ。だからこそしっかりと肩にのしかかる。
「し、しかしですねお兄さん……俺は言うほどヘタレでは無いと思うのですが……」
「お前とシエは出会って長いんだろ」
「まあ……一年の時からですし……」
「んで?いつ惚れた?」
「えと……わりと初期……です……」
なんとなく言われることが分かって理央はその身を縮こませる。
すぅ、とシアは息を大きく吸い込んで。
「そんだけ経ってんのに告白すら出来ねえヘタレだけにはぜっっっったいにやらん!!!」
再びガーン、とダメージを受ける理央。
もはや立ち直れないらしく下に両手を着いたまましくしくと肩を震わせていた。
しかし、そう言うのも分かってしまう。それはそうだ。自分はその間何も出来ずに居たのだから。
でも。
「俺は……そんなんじゃ」
「じゃあなんでしなかった?出来なかった?」
「それは……」
「ビビってたからだろうが」
口をつぐむ理央に、ほらなとシアは呆れて顔を正面に戻す。
「一昨日来やがれさ」
「まったく男二人裸でなにやってんだか……」
竜也がジト目で二人を交互に見る。
しかし理央は複雑そうに眉を寄せて、下についている自身の手を見つめていた。
その様子はやはり寂しそうで。
「おーい、あんま気にすんなよ理央」
海豚が歩み寄って理央の肩を軽く叩くが、理央は顔をあげない。
どうしたのだろうかと覗き込もうとした時、顔を上げた理央と目が合った。
「俺……」
その目が僅かに揺れているのを、海豚は静かに見つめる。どうやら理央にしては珍しく動揺しているらしい。
なにかに悩んでいるような、そんな目。
ふっと小さく笑ってわしゃわしゃと頭を撫でる。
「んな悩まなくていいだろ。ゆっくりでいいっつーの」
……さて。
「オレも……腹括らねぇとな」
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