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「あーーー……気持ちよかった……」
部屋の近くにあるソファに身を預けると、深く息を吐き出す竜也。
先程ようやくお風呂から上がって髪を乾かし終えたところで、今はヒロと共にソファでゆっくりしようとしているところだった。
女子陣からも聞いたが、ただお風呂に入っただけで色んなことがあった。
修羅と奈々や理恵の出会い。
シエがシアを嫌っている理由。
シエと理央の出会い……。
最後に関しては、竜也もその時にはすでに高校に居たため把握はしていた。
一年の頃、突如謎の集団自殺があった旧生徒会。
それぞれに悩んでた様子はなく、全員が自分の首を掻っ切って死んでいたらしい。放課後に、全員揃って。
明らかに自殺だが、どこかおかしい事件だった。
あれも呪いの子の仕業だったりして。……そこまで考えて、竜也は恐ろしくなった。
考えるのはやめよう。
「気持ちよかったね」
ヒロの声が聞こえてそちらへ顔を向ける。
嬉しそうな表情。それを見てるとこっちまで嬉しくなった。
そうだね、と微笑み返す。
「旅行とか来たこと無かったもんね」
「たしかに……基本的にあんまり行かないからなぁ」
「ヒロも?」
「うん。まあこの歳になると親とも来ないからね……」
そこまで言ってヒロは言葉を止めた。
……正直、竜也の前でどれ程家族の話題を出していいか分からなかった。
出会った頃は今までどこで何をしていたのかと触れようとしただけで動揺し、酷い時にはパニックになる事だってあった。それが家族のことなのかも分からないが、もしかしたら他の事だとしてもそれだって含まれてるかもしれない。
それらの過去が彼にとって怖かったものなのか、嫌だったものなのか。彼にとって、家族はどのような存在だったのか。
佑馬はどう思っていたのか分からないが、少なくとも自分は……触れるのが怖かった。
佑馬の弟たちとは普通に関わっていたように見える。「どうすればいいか分からない」と少し戸惑いつつも、一緒に楽しそうに笑っていた。
ただ、佑馬の母親の話になると少し顔が強張っていたような。
……家族というか、親、だろうか。
もしかしたら、それが彼にとって話したくないことの一部なのかもしれない。
「ヒロ?」
「あっ、ごめん。どうかした?」
「ううん。なんかぼーっとしてた気がして」
親友の事だ。そりゃあ知りたい。でも、触れることによって彼が傷ついてしまったら。
つい最近勇気を振り絞って自分のことを話してくれたのだ。それ以上を求めるのはどうなのか。
……ああ全く、臆病でどうしようもない。
「そろそろ戻ろっか。きっと生徒会も他の人たちも揃ってるよ」
「そうだね。ヒロとゆっくり過ごすのも楽しかったけど、聞きたいこともあるし……」
戻るかあ、なんてだるそうに立ち上がる親友の姿にヒロはクスリと笑う。
親友に新しい仲間が出来たことが未だに嬉しくて、なんだか胸が熱くなった。
少しずつ、少しずつでいい。ゆっくりいこう。焦ったって仕方がない。
幸い、時間はまだまだあるのだから。
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