第五章 休息②

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 竜也とヒロが部屋へ戻るとやはりとっくに揃っていたようで、それぞれ盛り上がっていた。 こんな機会もそうないのだから気持ちは分かる。だが、以前より竜也には気になることがあった。 一人窓の外を眺める修羅に歩み寄る。 「……ん?どうかした?」 竜也に気がつき、振り返ってこちらを見つめる黄緑の瞳。 修羅組のリーダー。本名、小林ナリア。 痛みと引き換えに大抵のことが出来る彼の事は、修羅組のメンバーですら分からないこともあるのだとか。 その中でもやはり気になるのは。 「呪いの子は学生ばかりだ」 「そうだね」 「なのに、なんで大人の修羅が呪いの子なの?」 「……そうだね、そろそろ言っておこうか」 修羅は自身を指すように胸に手を当てる。 そしてニコリと微笑んで。 「それはね、僕がだからさ」 「……え!?」 驚く竜也に続いて、聞こえていたらしい他の面々も思わず声を上げる。 なんと海豚と香偲以外の全員、修羅組も驚きを隠せないようだった。 何かあるのだろうと思って問いかけた竜也でさえ、予想外の真実に開いた口がふさがらない。 「じ……十八??」 「てっきり大人かと……」 「それも間違ってないからね」 驚きながら歩み寄ってきたシエが、修羅の言葉にゆっくりと首を傾げる。 「能力が体に合わなくてね。それが僕の場合はものだったのさ」 そして「色々と便利なのもあって大人を名乗ってるんだ」と修羅はイタズラっぽく笑う。 「そんなものもあるんですね……」 「てか香偲は知ってたわけ!?」 「えっあっ。そうなんです、ごめんなさい」 詰め寄ってくる奈々から目を逸らし、その勢いから思わず謝ってしまう香偲。 それを見た修羅は「ああちょっと待って」と二人の間に割って入る。 「僕が頼んだんだ。多くの人にバレるのは避けたくてね。そのうちみんなにも伝える予定ではあったんだけれど」 修羅は微笑んだまま、しかしそっと目を伏せた。 「……結果として、嘘をついたことになっただろう。それが分かった時にみんなが離れてしまうのではないかって不安になってしまって」 それが怖くて。 そう消え入りそうな声がポツリとこぼれる。 奈々は理恵、朱焚亜と顔を見合わせて深いため息を吐き出した。 「バカね。そんなんで離れるわけないじゃない。修羅のことだから何かワケがあったんだろうって思うくらいよ」 「そそ。ただ、ずり〜なって思ってよ」 ねー、なんて笑って顔を見合わせる三人。 修羅はそれを不思議そうに眺めたあと、やがてふっと頬を緩ませる。 「……そうだね。僕がバカだった。もっと仲間を信じないとね」 近くで聞いていた竜也はなんだか心が暖かくなって、思わず笑みをこぼした。  生徒会とは違う形で絆を作り上げてきた修羅組。 彼らとはつい最近出会ったばかりでまだ深くは知らないが、なんとなく気が合う気がして、いい関係になれるのでは確信している。……まあ、ただの願いでもあるのだが。 強力な仲間でもあり、頼りになる先輩でもある。これから、もっとたくさんの事を知っていきたい。 「……どうしてだろうね。昔から……凄く独りが怖いんだ。理由も分からないのに、ずっとずっと」 「前も言ってたよね。ま、大丈夫だって。私ら、離れろって言われても離れないから」 「はは、それは助かるよ」 小さく笑ったあと。どこか寂しそうに目を伏せる修羅を、香偲は静かに見つめていた。
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