第六章 見えた世界

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「​───で、無事治ったと?」 「えぇ」 竜也の不思議そうな問いかけに愛が頷く。 確かにバッチリと目が合っているし容姿もちゃんと見えているらしいし……。  そんな方法があったとは。 そう思うとやはり修羅の干渉能力は強い。 というか、もしかしたら戦闘よりもこういう何かの能力を手伝うことの方が向いているのかもしれない。 隣のヒロも目を瞬かせつつ「すごい」と感心している。  しかしこう、なんというか……。 見つめてくる愛の視線から、気まずそうに目をそらす竜也。 あらためて容姿を見られたとなるとなんかこう、くすぐったい。 褒められたし。 愛はそんな竜也を見てクスリと笑みをこぼしてから、立ち上がって香偲へと歩み寄る。 そっと両手で彼の手を取って包み込むように優しく握った。 「あなたのおかげで、光が見えた。……本当にありがとう」 じわりと目に涙を貯めて嬉しそうに微笑む愛を見て、香偲は顔を真っ赤にして視線を泳がせる。 「いやっ、その……う、上手くいってよかった……です」 「ふふ、敬語じゃなくていいわ。私たち同い年だもの」 「あっ、あ……うん……」 「あら?もしかして朋以……」 にまりと恵美の口角が上がっていく。 咄嗟に、その先の言葉を遮るように香偲の手が恵美の口を押えた。 「ちょ、何言うつもりですかっ」 「もごもご」 「ち、違いますから!」 「なにがさ?」 同じようににまりと笑うシア。というより、大体の人間がにまにまと香偲を見ていた。 それに気付くと香偲はさらに顔を赤くして、首を横に振る。 「なんですかその目!絶対!思ってること違いますからね!?」 「おいおい、に嘘つくつもりかー?」 「海豚にぃ……じゃなくて!紺沢は黙ってて!」 「なにカッコつけてんだよ。昔ずっと「海豚にぃ」「海豚にぃ」ってあとつけてきたくせに」 「あっ!ちょ、昔の話は卑怯でしょ!」 わいわいと騒がしくなる生徒会室。 愛はその光景を眺める。「見える」という喜びを噛み締めるように、ゆっくりと。 順の一見で舞台上の人物たちは見たものの、ちゃんと見えるようになるなんて。  十年以上前、光を失ったあの日。 いきなり電気が切れたように何も見えなくなって……暗くて怖くて仕方なかった。 組織の人間に説明されて、「ああもうこれから先、光を見ることはないんだ」と、子供ながらに覚悟を決めるしかなかった。 色んなことを、諦めるしかなかった。 ああ、もう一度世界が見えるようになるなんて。 大好きなみんなの顔が見れるなんて。 愛はこぼれる涙を隠すように俯いた。 「……ありがとう」
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