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第七章 N
「───と、いうことで……」
「Nよ。よろしく」
生徒会メンバーのきょとりとした視線が女性に向けられる中、海豚に話を振られたNと名乗るその女性は人の良さそうな笑みを浮かべる。
ここ、生徒会室において白髪赤目で大人である彼女の存在は異質に思えた。
「その……」と最初に気まずそうな声を上げたのはシエ。
「どちら様でしょうか……えと、名前ではなく正体というか……」
「たしかに怪しいわね。とはいえ言えることは少ないのだけれど……」
「オレの知り合いだ」
Nがどうしたものかと頭を悩ませていると、海豚がどこか気まずそうに言葉をこぼす。
次は「知り合い?」と不思議そうな視線が海豚に注がれるが、本人は気まずそうに顔を逸らして右手の人差し指で頬をかくだけ。
その様子にNはくすりと目を細めて笑う。
「ええ。ちょっとした知り合いよ。今は海豚くんに免じて信じてもらえないかしら」
「海豚の知り合い……」
珠喇が奇妙そうに見つめつつぽつりと呟いた。
昔から謎の多い海豚。多くを語らず、過去を聞いてもどこで情報を得ているのか聞いても「危ねェから」とはぐらかし、幼なじみの珠喇でさえ知らないことの方が多かった。
つい最近本名だって明らかになったくらい。
そんな彼の、知り合い。
興味が湧かないはずも無かった。
だが多くは語れないらしい。しかしそれを信じろと言われても……。
「そもそも、何が目的さ?」
警戒を隠すこともせずシアがNに問いかける。
「それもそうね」とNは腕を組んで、にこりと微笑んだ。
「困っているでしょう?色々と。それを知って、なにか協力出来ることがあるかもしれない、と思ったのよ」
「協力?」
「ええ。自分で言うのもなんだかおかしいけれど、私はあなた達よりは多くの知識や情報、頭を持っているつもりよ。だからきっと、力になれる事があるわ」
「それは、ありがたいんだけど……」
姫汐が不安そうにチラリとシエに視線を移す。
自分たちにとってありがたい相手なのはわかった。しかし、自分たちが海豚の友人だとはいえ協力したところで彼女にとってのメリットが何も無いはず。
なのになぜ。
その考えを察したのか、Nは目を細める。
「……私にとって、海豚くんが大切なだけよ。そんな彼の友達だもの。それに……」
そう言うとNは笑顔を消して真剣な表情を浮かべ、あらためて生徒会に顔を向けた。
「あなたたちはあまりにも危険な橋を渡っているわ」
ざわ、と生徒会室が動揺に包まれる。
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