第七章 N

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 分かってはいたはずだが、彼女の雰囲気が「それでは甘い」と突きつけてくるようだった。  Nは再び優しく微笑むと「だから」と言葉を続ける。 「放っておけないのよ。……まあ、そうして協力したいのは私のワガママだけれど」 そうしてどこか寂しそうに眉を下げてみせた。 「……お願い。あなた達に、協力させて」 しん、と静まる生徒会室。 その様子から敵意がないのは理解出来たが、どう信じきればいいかが分からない。 シエが返事に困っていると。 「この人は味方だ。少なくとも、オレの敵じゃない。だからお前らにもなにもしねェ」 海豚はそう言うと、軽くため息を吐き出す。 「確実に力になってくれる。……オレとしては、この話に乗りたい」 彼なりに悩んだのだろう。どこか複雑そうだが、その目からは強い意志が見える。 シエはそれを見つめてから、少し目を伏せて黙り込む。 そして、ゆっくりとNに顔を向けた。 「信じたいですが……正直、まだ信じ切ることは出来ません。だから……とりあえず話せる範囲で、話を聞かせていただけませんか。力になってくれる味方だという証拠が欲しいのです。……そもそもあなたは呪いの子のことを、どこまで詳しく知っているのですか」 Nは見つめたまま少し黙ってから「分かったわ」と小さく頷く。 「呪いの子のことは、異能力者としてしっかり知っているわ。もちろん海豚くんやあなたたちがそうだという事も。能力の事についても、それぞれのグループについても詳しいと言える。清皇についても、少しは分かるわ」 「清皇のことも?」 香偲が驚いたように目を丸くする。 あれほど何も情報が出なかったというのに、少しとはいえ知っているのか。 Nはそれに「ええ」と頷くと、ゆっくり竜也へと視線を移す。 「あなたの事も、少しはね」 「俺の、こと……」 「流石に詳しくは分からないけれど。あなたが清皇に鍛えられてそこから逃げてきたことも、彼らがあなたを探しているということも」 なぜ、そこまで。 竜也は自身を落ち着かせるように服の裾を握りしめる。 誰も知らなかったはずだ。あそこのことなど、誰も。 一体どこからそんなことを。 「……あなたが苦しんでるのも、分かっているつもりよ。だから一つ、あなたがほんの少しだけ安心するかもしれない情報をあげるわ」 え?と竜也が首を傾げると、Nは「あくまで私の推測だけれど」と付け加えてあらためて口を開く。 「理由は分からないけれど少なくとも今、清皇(あそこ)はあなたを捕らえる気が無いわ」 「え……でも」 「今もなお、あなたを自由にしているのがその証拠よ。向こうはとっくにあなたの居場所を掴んでいるし、なんなら監視してるかもしれないわね。でも接触すらしてこない。たとえ泳がせているだけだとしても、捕らえる気は無いということ」 「言われてみれば、ASAが「清皇(向こう)は気付いている」と言ってからもかなり時間が経っているが、何も動きは無い。それは不自然だ」 順が納得したように数回頷くと、たしかにと数名も続いた。  強力な力を持つ竜也をここまで野放しにしているのは、何故かは分からないが捕らえる気がないと言える。 清皇の考えが読めない。 それは、竜也も同じようだった。
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