1 孤児そして疑似家族

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 先頭の男が左側の下草をかき分け、数歩前にゆっくり進んだところで「あった」と声がした。  長身の男は、プラチナブロンドの少年を傍の倒木に座らせると先頭の男のそばに近づいた。一気に血の匂いが強くなる。足元には、月光が2体の男女の死体を照らしていた。 「夜盗にやられたのか?」 「多分。身ぐるみ剥がれている…こんなときに。浮かばれないな」  体躯の良い男が、死体を見分しながら言う。  長身の男がまた数歩動いて周囲を見渡す。ボロボロの背負子や切れ切れのロープが転がっている。木立の隙間から向こうに街道が見えた。  長身の男が戻りながら、「行商人の夫婦でしょう。森に引きずりこまれてやられたな」と言った。  目の前にプラチナブロンドの少年がいた。 「殺されたの?」 「いけません。汚れますので離れてお待ちください」  体躯の良い男が少年の肩に手を置いて、その場から離そうと促すと、少年は 「どうするの?」 と訊くので、 「我々とは無関係の件ですから、立ち去りましょう」 と答えた。 「だめだよ。死者は丁寧に葬らなければ」  少年がキッパリと言うので、大人2人は顔を合わせた。 「どうする?」
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