4 月光

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 王宮に行くほど、街は静けさを深めていった。そして王宮が見える位置に着いたとき、サジュームは息を飲んだ。そこから見えたのは、王宮広場を我が物顔に闊歩するガラティア王国の兵士だった。  そして、広場中央には、合計で5本の丸太が立てられており、そこにアーク王子を除くすべてのアナトリア王家の人々が遺体となって晒されていた。その遺体に、無数のカラスが群がっている様が禍々しかった。  さらに、その背後に望む王宮正面の階段前に掲げられた旗が2基、ガラティア国の紋章のものと並んで王弟ブライアンの紋章の旗が風にはためいていた。 (これほどまでに…) サジュームは、ブライアンの王位への執着を思い知った。 サジュームはその場から踵を返して、裏通りの暗いところに入った。衛兵たちの背後に潜んで、彼らの立ち話をいくつか聞くと、再び転移で森へ帰った。  サジュームは拠点より少し離れたところで顔と手足を洗い、その場でしゃがみこんだ。 (どのように説明したものか…)  サジュームはどう言葉を尽くしても受ける衝撃は変わらないという結論に至り、気を取り直してアークたちに向かって歩き出した。
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