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サジュームが話し終わった瞬間、アークはすでに涙でぐしゃぐしゃになっていた顔をさらに歪めて、獣の雄叫びのような叫び声で立ち上がり、のけ反った。そして、髪を振り乱して森の木立の中に入っていった。
すぐさま、ガイウスが抱いていたアメリアをサジュームに渡し、剣を握るとアークの後を追いかけていった。
サジュームは、アメリアの胸元に額をうずめると、大きなため息をついた。
アメリアの小さな手がサジュームの泥で固まった髪を触った。
「ああ、汚いよ。ごめんね」
とサジュームは顔を上げて、アメリアの手を軽く握った。サジュームの大きな手にすっぽりと入る小さな手を見て、サジュームはぼんやりと(ああ、そういえば風呂にいれなければいけないのだった)と思った。
日が暮れてきて、木の間からガイウスがアークを引っ張ってきた。
アークを寝かしつけると、ガイウスは火のそばまでやってきた。
「すみません」とサジューム。
「なんで謝る。お前こそ、嫌な仕事させて悪かったな」
ガイウスは、はぁとため息をついて膝の間に頭を項垂れた。彼は多くを語らず、先にテントに行った。
いつの間にか東の森の端から月が昇っていた。
サジュームは火のそばで道具を整理したり、火にくべるための枝を鉈で切ったりしながら火の番をしていた。
手を休めると、悲観的なことばかりが頭をよぎる。ガイウスと二人で、守るべきものを守りながら戦っていけるのだろうか、と。彼はまるで自信がなかった。
(今やれることは火の番くらいか…)
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