1 孤児そして疑似家族

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体躯の良い男が長身の男に訊くと、その男は 「ガイウスが頑張ってください」 と諦めたように言った。 「そうか」  体躯の良い男は、すぐに携帯シャベルで地面を掘り出した。  その横で棒切れを使って少年も地面を掘り返している。長身の男も携帯している短剣で地面を掘りだした。  人が埋まるほど穴が掘れたところで、長身の男は疲れ切ってしまい傍の木の根元に腰を下ろした。  そのとき、背後で動物の鳴き声のような音がした。  はっとしたが、音の原因を確かめるため、そうっと木の幹の反対側を覗いた。目を凝らすと、草の隙間に植物とは違う塊があった。「あう、あう」という音はそこから出ているようだった。  長身の男がそうっと手を伸ばすと、指先に荒い繊維の感触があった。ゆっくり全体を探るとそれは粗末な布の塊で、両手で持ち上げると、確かな重さとしっとりとした温かさがあった。 (これは…まさか…)  男が長い指で布をめくるとそこには、目を見開いている赤ん坊の顔があった。 「なんてことだ…」
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