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その人間は兵士ではなく、森の端にすむ村人であったが、狩りとはいえ原生林に囲まれた湖畔近くまで人がやってくるとは思ってもいなかった。
アークにとって、ガイウス、サジュームそしてアメリア以外は敵だった。どれほど無害な村人だろうと、アークにとっては脅威なのだ。
そのときは、ガイウスとアークは木陰に隠れてやり過ごしたのだが、それ以来、アークは怯えてしまって好きだった森の探検もしなくなってしまった。
「…どうしたものか」
その日の夜、ガイウスは偵察から戻ってきたサジュームと火を囲んでアークの問題を相談していた。
「気丈にふるまっておられますが、まだ8歳ですからね。ここのところの無理がたたっているのかもしれません」
サジュームは木切れを火に投げ込んだ。火の粉が夜の闇に立ち上った。その先の夜空には、満月が昇っている。
「…どうしたものか」
再びガイウスが呟いた。
そのとき、「困っているの?」と鈴の音のような声がした。ミウだった。
今日も月光に照らされ、儚げな様子でサジュームの隣に立った。
「ええ。王子がこの隠れ家を発見されるのではないかと恐れて、ふさぎ込んでいるのです」とサジューム。
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