5 湖畔の隠れ家

5/8
40人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
 サジュームが急に闇に向かって語り出すので、ガイウスは驚いてしまった。 「…どうした?サジューム」  恐る恐るガイウスが声をかけると、サジュームは、 「今、アメリアの精霊に話かけられましたので…」 と、なんのことはないという表情で答えた。 「え?精霊?いるのか、そこに?」  ガイウスが訊くと、サジュームは「ええ」と答えた。しかしガイウスには、サジュームの隣には、手製の木枠のベッドに寝かされているアメリアしか見えなかった。  状況がよく分かっていないガイウスを放っておいて、サジュームは何かぼそぼそと話をしている。そして、 「え?そんなことが出来るんですか?」 と驚きの声を上げてガイウスを見た。見られたガイウスは及び腰になりながら「なんだ、今度は!」と呻いている。 「ミウが言うには、結界を作って、隠れ家を見えないようにできるそうです」  サジュームが明るい声でそう言うと、アメリアを抱いて立ち上がった。 「おいおい、どうするんだ」  ガイウスはサジュームの後を追うように、火のそばから立ち上がった。サジュームはアメリアを抱いたままスタスタと闇の方に歩いていくと、「この辺ですか?」と空に向かって話かけている。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!