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サジュームが急に闇に向かって語り出すので、ガイウスは驚いてしまった。
「…どうした?サジューム」
恐る恐るガイウスが声をかけると、サジュームは、
「今、アメリアの精霊に話かけられましたので…」
と、なんのことはないという表情で答えた。
「え?精霊?いるのか、そこに?」
ガイウスが訊くと、サジュームは「ええ」と答えた。しかしガイウスには、サジュームの隣には、手製の木枠のベッドに寝かされているアメリアしか見えなかった。
状況がよく分かっていないガイウスを放っておいて、サジュームは何かぼそぼそと話をしている。そして、
「え?そんなことが出来るんですか?」
と驚きの声を上げてガイウスを見た。見られたガイウスは及び腰になりながら「なんだ、今度は!」と呻いている。
「ミウが言うには、結界を作って、隠れ家を見えないようにできるそうです」
サジュームが明るい声でそう言うと、アメリアを抱いて立ち上がった。
「おいおい、どうするんだ」
ガイウスはサジュームの後を追うように、火のそばから立ち上がった。サジュームはアメリアを抱いたままスタスタと闇の方に歩いていくと、「この辺ですか?」と空に向かって話かけている。
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