5 湖畔の隠れ家

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 何がなんだか分からないガイウスは、数歩離れてサジュームを見守っていると、音もなく一気に周囲が暗くなった。  闇に残されたガイウスとアメリアを抱いたサジューム。しばらくすると、目が慣れて月夜に湖畔が輝く様子とその縁でたたずむお互いを見ることができた。 「どういうことだ!テントは?王子はどこだ!」  ガイウスがきょろきょろ辺りを見渡し、闇しかない湖畔に激高して叫んだ。サジュームは慌てる様子もなく、その腕を引っ張って、来た方向に歩き出した。  そして彼らが数歩歩むと、空間が歪んだと思った瞬間目の前に見慣れたテントと煌々と燃え盛る焚火があった。 「…なんてことだ」  ガイウスは茫然として立ち尽くしている。 「素晴らしいです。ミウ」  サジュームはまた空に向かって話かけている。 「どういうことか、説明しろ」  ガイウスがサジュームの肩を掴んだ。 「今、ミウが結界をはってくれたんです。これで、外部から我々の住まいは見えなくなったようで。これで、アーク王子が安心してくれればよいのですが」 とサジュームは言うと、アメリアを小さなベッドに置いて自分も火のそばに座った。
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