1 孤児そして疑似家族

4/7
40人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
 男は意図せず声が出た。  死体の男女はこの赤ん坊の両親であったのだろう。女連れの行商など珍しいと思ったが、家族連れの旅であるなら納得がいった。なにか当てがあって、村から出てきたのだろう。 「どうした、サジューム」  少し息を切らした体躯の良い男が声をかけた。  長身の男は、立ち上がると穴に横たわる2体に近づき、「この二人の子供でしょう。離れたところに居ました」と腕に抱いた赤ン坊を見せた。その口調は、この突然発見した小さな命をどうすればよいのかと言う戸惑いを含んでいた。  体躯の良い男が赤ン坊を覗き込んで思案していたとき、少年が割り込んできて覗き込んだ。 「赤ちゃんだ」  この慌ただしく長い絶望の一日の中で、少年が初めて出した明るい声だった。 「この子を一緒に連れて行こう」  体躯の良い男が、腹が決まったという風に言った。 「なにを言っている?私たちには余分なものを背負う余裕はない」  焦ったように長身の男が言うと、体躯の良い男は 「逃げながら考えていた。我々はもうすでにお尋ね者だ。男2人と少年1人という組み合わせの旅人は街道で徹底的に探されるだろう?どうすれば、人の目をごまかせるか…」
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!