40人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
「それで?」
「その子を末っ子とした家族を演じるんだ。アーク殿下には、申し訳ないが女児の扮装をしてもらう。そして、俺が父親役だ」
「なんですか、それ。私は母親などなれませんよ」
「魔法で髪色を変えられると聞いたが?白髪は出来るか?」
「…出来ます。老人になるのですか?」
「俺の父親だ。そして、俺は子供たちの父親。先日、サーレィの街で大火事があっただろう。妻を失い、焼け出された町民っていうのはどうだ?」
2日前、王都近くの街で街区の3分の一が焼ける大火事があった。同時多発的な出火で不審火の可能性が高く、さらに治安が急速に悪化したので王都の警備隊の大半が応援に駆けつけていた。そのせいで、王都と王宮の警備が手薄で、あっという間に王宮は反乱軍に蹂躙された。
体躯の良い男は、偽装家族の設定を語りながらサーレィの火事と今回の惨劇の結びつきを考えていた。
最初のコメントを投稿しよう!