2 逃避行

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2 逃避行

 アーク王子一行は、闇夜に紛れて森を過ぎるとリントの街の近くまで来た。  リントの街の外では、外壁に沿うように人々が群れていた。テントもいくつか張られていた。どうもサーレィの街から逃れてきた人々が、リントの街に入れず順番待ちをしているようだった。  昨日、王家が転覆したのだ。街の警備が厳しいのは、その知らせが早馬で周囲の街の長や領主に入ったためだとセジュームは思った。  ガイウスとアークと赤ん坊はいったん森の中に留まり、サジュームだけが転移魔法で街に入ることにした。  サジュームは、魔法で外見を老人に変化させ、腰をかがめて街を歩いた。街は人でごった返して、だれもサジューム老人のことなど気にかけない。サジュームもそれを良い事に、行き交う人々の噂話に耳を傾けて昨日からの情報の収集に努めた。  街へ入る3か所の入口を見に行くと、やはり男2人と少年1人を含むグループは、止められて尋問を受けていた。  飲み屋で軽く食事をとってみると、街のご隠居たちが厳重な警備の憶測をあれやこれやと言い合っていたが、昨日の出来事の核心に迫る内容ではなかった。 (まだ昨日の今日だからな…)
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