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え…? これって。
僕は再度驚かされる。写真をぱらぱらと撒いたみたいなレイアウトの見開き。
その内の一枚に、青空と観覧車が写っている。
すぐにわかった。あの日「かけおち」で行った遊園地だ。
フリーのページを与えられて、いろいろ案が出たんだけど…。俺が最近写真撮ってるからそれを載せようかって話になって。だったら、って思った。どうしても晴のかけらを、どこかにかたちとして残しておきたかった。
お話の続きのようにも、そうでないようにも取れる構成。短い文章も書かれている。
“ふたりで、はじめてとってもとおくにいった”
“きみの、たまごみたいにまあるいあたま”
黒い髪の後ろ頭のてっぺん、ネコミミが生えている。量産型スニーカーの足元。ドリンクのカラフルなストローを持った指先。
僕だった。どれもこれも。
顔も、後ろ姿すら写っていないにもかかわらず、わかる。
考えてみたらふたりで写真なんか撮ったことなかったし…あの週刊誌で終わるのはどうしても嫌だったから。勝手にごめん。私物化もいいとこだし。
………うれしい。ありがとう。
そうしぼり出すのが精一杯だった。こんなに、会えないあいだにも僕のことを思ってくれていた。
晴、こっちに来て。
僕たちは額をよせあって手をつないで眠った。
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