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「負のオーラを感じるわね」
占いの館の主、各務ほの香が次の予約者の名をじっと見つめていた。
「見ただけで分かるんですか?」
「まさか。冗談よ」
そう笑い、直ぐに表情を引き締めた。ほの香には感情がオーラになって視えるらしい。
「予約しに来られた時に視えちゃったのよ。いちかさんが落とし物を取りに行った日よ。タイミング的にすれ違ったと思うんだけど」
「すみません。覚えてないです」
「それはあなたがボロ泣きして……。そろそろお客様がいらっしゃるわ」
「はい」
ファイルには、十年会っていない幼なじみと同じ名前が記されていた。
「村木里至、二十代男性。本人じゃないよね」
一階へ降りて行くとベルがチリリンと鳴った。
「お待ちしておりました……」
遠目でも幼なじみの面影を感じ、咄嗟にマスクを付け近づいて行く。
「十時に予約の村木里至様でいらっしゃいますか」
「はい、そうです」
心臓がドキドキするのを必死に抑え、なるべくゆったりとした口調を心がける。これはほの香の指導で徹底している事だった。
「こちらにお座り下さいませ。各務ほの香の助手をしております、一ノ瀬と申します」
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