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「オーラが視えなくても、村木様が今、困っておいでなのは分かりますよ。その腕時計は年季が入ってますね。お父様からのプレゼントですか?」
ほの香も腕時計が気になっていたらしい。
「父が使っていたものです。実家に帰った時、電池が切れたまま放置されていたのを貰って来ました。それまで腕時計は使って無かったんですけど、ホクロを隠すには丁度いいなって」
「隠す程ではないと感じますが」
私も大きなホクロだと思っていたが記憶違いらしい。
「そうでしょうか。彼女——手首のホクロが顔に見えて気持ち悪いって言ったんです」
「彼女とは、小野いちかさん? それとも恋人?」
小学生とはいえ高学年だ。言ってはいけない事だと分かっていた上で里至に投げつけた。
「両方です。言われた時は本当にショックで、ホクロを消してしまいたいと思いました」
自分が辛い思いをしたからと言って、他者を貶めて良いわけがない。この時の事はずっと後悔していた。だからこそ、自分の弱い部分に負けない様に生きていこうと決めた。なのに、私は本名を隠してこの場をやり過ごそうとしている。
「それでも消さずにいるのはどうして?」
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