強運な幼なじみ

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 里至が帰った後、ほの香は楽し気な様子で「頑張りなさい」と私の肩を叩いた。私には話を聞く事しか出来ないし、勉強したての姓名判断など出来るはずもない。ため息が出た。  それから一週間後、里至は時間ぴったりにやって来た。少し息が切れている。 「良かった。時間に間に合わないかと思いました」 「少しくらい大丈夫ですよ」  その為に次の予約まで余裕を持たせている。実は前回も少しなら延長出来たのに、ほの香がそうしなかったのは、里至に私の口から本当の事を告白させる為だった。 「どうぞ、お座りください」 「はい」  里至は先日より柔らかい表情をしていた。それに今日は腕時計をしていなかった。 「今日はマスクをしていないんですね」  何の気なく言ったのかもしれないが、私の心臓はドキンと跳ねた。 「はい。ちゃんと、お話ししようと思いまして」  二人向かい合って座ると、さらに緊張して手が震えて来た。 「お茶でも飲んで落ち着きなさいな」 「先生、すみません」 「いいのよ」と、テーブルまで運んでくれた。 「ルイボスティーにしてみたわ。村木様のお口にも合うと良いのだけれど」
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