強運な幼なじみ

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 ちらりと私を見て、鷹揚に頷いた。マスクをしているから私に気付かないのか、それとも同姓同名の別人なのか判断つかなかった。半袖のシャツから伸びた腕に無骨な腕時計がはまっている。もし、幼なじみの村木里至としたら、腕時計の下に大きなホクロがあるはずだった。 「お名前に間違いがないかご確認下さいませ。すでに説明があったかと思いますが、こちらでは姓名判断と占星術で過去と現在、未来を占います。お話しする中で立ち入ったことをお伺いするかもしれません。全てにお答え頂かなくても大丈夫です」  高い天井にシックなシャンデリア、ほの香の趣味で集めたアンティーク家具の中でも、里至は動揺する事なく静かに頷くだけだった。初めて来た人は、大抵そわそわと落ち着きなくあたりを見回したりするのに、彼は淡々と必要事項を書いていた。 「あとは占い師の先生に話せば良いですか?」 「はい。あの、私も助手として同席する事をご了承頂けますか?」 「——はい。大丈夫です。これ、書きました」  一瞬、考える素振りを見せ、微笑んだ。 「ありがとうございます」  占いの目的の項目を見ると、全体運、仕事運、恋愛運にチェックが入っていた。
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