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「ええと、そうですね」
じっと自分の名を見つめている里至は、運気が良いと言われた割に少しも嬉しそうではなかった。占い結果にも、それほど興味なさそうに見える。それをほの香も感じている様だった。
「いちかさん、ありがとう」
「ハーブティーです」
里至の前に置くと、鼻先に手を当てはっきりと拒絶した。その時に時計がずれ、手首のホクロが見えた。
「ハーブティーはお好きではなかったですか?」
我ながら白々しい演技だった。
「すみません。昔からミントの香りが苦手で」
「申し訳ございません。珈琲をお持ちしますね」
里至は腕のホクロを咄嗟に時計で隠した。その瞬間に彼が幼稚園から中学まで一緒だった村木里至であり、私がホクロを時計で隠さねばならなくなった元凶だという事を思い知らされたのだった。
「占星術では」
ほの香が話を続ける。
占星術は太陽系内の太陽・月・惑星・小惑星などの天体の位置や動きと、生年月日等を関連付けて占うものだ。
里至は一通り話を聞いて小さく息を吐いた。
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