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里至が立ち上がらんばかりに声を張り上げた。
「そうなんです。自分では運が良い人間だなんて思った事がないんです。いえ、むしろずっと悪い」
里至はクラスの中心にいるような人物で、運動も勉強も無難にこなしていた印象だ。
「そういう思いは幼少期から?」
「はい。両親から運気が上向きになるようにと考え抜いた名前を付けたと聞かされました。名前は一生のお守りの様なものだと」
「ご両親の想いはとても素敵だと思いますよ」
「——名の由来を作文で書く時は、枚数が足りないくらいでした」
里至はその時の事を思い出してか少し笑った。
「でも、その時に思いがけない事が起こってしまって」
里至が話そうとしている事が分かってしまい、胸が苦しくなる。
「同じクラスの小野いちかという子がいじめにあってしまったんです」
「あら、それで一ノ瀬さんの事を聞いたのですね」
全てを見通す様な目で私を見た。
「同じ名前ですね」
何とか平静を装ったが、二人の目をまともに見られなかった。
「なぜいじめに?」
「僕の作文の中で書いた姓名判断に皆が興味示したので、クラス全員の姓名判断をしようって提案をしました」
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